鯛が「今この瞬間」について話す

魚類が自分にとって大切な「今この瞬間」を書き残す

「優しい音楽」の話

それを私は、優しい音楽だと思った。


EXILE TAKAHIRO LIVE TOUR "TAKAHIRO 道の駅 2023" ~Road to EXPLORE~


5/11の岡山公演に行ってきた。


たかひろくん(普段彼のことをこう呼んでいるのでこう表記する)のソロライブは、コロナ前の「道の駅」岡山公演以来2回目の参戦だ。


乗っけから包み隠さず言ってしまうが、私はたかひろくんの音楽が、ジャンルの好み的にドンズバストレートに自分に刺さるわけではない。
でも、彼の音楽を聴く度に、「他の音楽では得ることのない感情」になるのだ。



彼の音楽を聴くと、優しい気持ちになる。



基本的に私は、音楽に優しさを求めないタイプだ。というわざわざしているこの説明も、正直自分で言いながら「???」になるくらいのノリである。
別にアーティストに対して、「こっち」を向いて優しくしてもらわんで構わんよと思っているし、そもそも「音楽を通して"お前"の世界を見せてくれよ」と思っているタイプだ。「こっち」の方を向いて発せられる歌詞や音楽に、慣れてるか慣れてないかでいうと、どちらかというと多分後者だ。


でも、自分でも本当に分からないのだが、彼の音楽だと、その「優しさ」をすんなりと受け取ることができる気がする。


彼の音楽では、普遍的な愛や恋について歌われることが多い。が、その歌われる愛や恋の背景には、多くの場合で、弱さや悲しみや絶望が存在している。私はその温度感がとても好きだ。


愛や恋や幸せや、そういったあたたかなものを歌える人は、それが「あたたかなもの」だと知っているのだと思う。
そして、そうやってあたたかなものを「あたたかい」と感じるためには、あたたかさと同じぐらい「冷たさ」を知っている必要があると思うのだ。


たかひろくんの音楽は、「冷たさ」を知っているからこその「あたたかさ」を歌える人の音楽だと、私は勝手にそう思う。
そしてその「あたたかさ」こそが多分きっと「優しさ」というやつで、私はたかひろくんの音楽に触れると、じんわりと「心があたたかく」なる。



弱さや悲しみや絶望、そういったものを知っている人こそ人に優しくできるというのはよく言ったものだ。でも人間はこの世に腐るほどいるので、全ての人間にこれが当てはまるとは一切思わない。そこまで人間に期待を寄せられるほど、自分自身が真っ直ぐ生きてもいない。



でも、たかひろくんが歌う歌のことは好きだ。




先日のライブのことを言語化しようとすると、うまくまとめるのが難しい。別に全てのを細かくレポしようというつもりもないし。あくまで私のためのブログだし。

でも、とにかくずっとずっとあたたかな気持ちになったのだ。


今回、まさかの前方4列目の席をご用意されてしまったのだが、そこから見える光景が本当に素敵だった。

客席に歌うたかひろくんの姿はもちろんのこと、嬉しそうに客を煽り、笑顔でファンサを送る姿。

EXILE TAKAHIROに初めて会う人ー?」と声を掛け、ぱらぱらとまばらに挙がる手に対して「殆どみんな会ってんじゃん!友達かよ!今日初めて会う人は、今日から友達ね!」と嬉しそうに笑う顔。

本当に嬉しそうな顔で「楽しいー!ずっとここでライブがいい!」「倉敷最高!」と叫ぶ姿。


「みんなが観ることはなかなかない思うけど、僕らがここ(ステージ)から見てるこの光景(客席)が、どんな景色よりも綺麗で素晴らしいんだよ。ペンライトもそうだし。本当に、ずっと見ていたい」とたかひろくんが言った直後に、ふと自分で後ろを振り返った時の、その光景の美しさ。

「あぁ、この光景を『どんな景色よりも綺麗で、ずっと見ていたい』と思ってくれているんだな」と思うと、ジンときた。



音楽もそうだが、音楽だけじゃない。
そうやって届けられる彼の表情や言葉や、客席から届けられる会場の拍手や、そんな一つ一つの「あちらとこちら」のやり取りから生まれるあたたかさが会場全体を包むようで、本当に心地がよかった。



本編の終盤、「次の曲で最後になります」と告げる声に対して、客席のお決まりの「えー!」がこだまする。しかしあまりにも収まらない熱気に「……終わりづらくない!?」と茶化すように言う。
でも、私もそこで終わると思っていた。
…………のだが、急遽ステージ上で集まるたかひろくんとバンドメンバーの皆さん。行われるメンバー会議。しばらくして、慌てるようにステージを走るスタッフさん。


……そうして、本編ラスト曲の直前に「TAKAHIRO 道の駅 倉敷's Night」と称し、急遽一曲のサプライズセッションが行われた。


静寂の中、「やっと」の歌い出しが会場に響いた瞬間、客席が大きくザワつき揺れる。



「運命のヒト」だ。



歌い終わった後「……すごいね、こんなことあるんだね」と少し興奮したようにたかひろくんは言っていた。

「これこそライブだね。」
うん、本当にそう思う。


「あちらとこちら」の生のやり取りから生まれたその奇跡のセッションは、まさに「コミュニケーション」と呼んで差し支えないものだった。
人と人が集まると、こんなことも起こるのだ。



アンコールが終わり、たかひろくんが捌けて行く時、会場から「ありがとう!」の声がいくつも上がっていた。
彼の姿を見送りながら、私も気付けば「ありがとう!」が自然に口からついて出ていた。なんせ、あの瞬間はどうしようもなく「ありがとう」しかなかったのだ。



ライブの最後、「ツアーが始まって、今日が一番楽しかったです」とたかひろくんは言っていた。



自分の地元である倉敷という土地で、ひとりのアーティストがそう言ったこと。それをライブという、そんなかけがえのない時間の中で共有できたこと。

「ああ、また宝物がひとつ増えたな」と思った。


またいつか、彼のソロツアーが開催される時、きっとまた私は彼に会いに行くんだろう。
彼の「優しい音楽」を共有する、あの「優しい空間」に帰ることができる日を、私は今から楽しみにしている。

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